2012年5月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2059ページ
ナイス数:69ナイス
■アブサン物語 (河出文庫―文芸コレクション)
僕のカミさんは猫好きである。
実家が農家であるから、生まれた時から猫と暮らしていた。
猫に好かれるたちらしく、お産の前に腹をさすれとやってくる猫。
生まれたばかりの子猫を見せに来る猫。
車の音を聞きつけ、玄関で待つ猫。
一緒に寝ようと、毎晩階段で待つ猫。
捕った鼠を自慢げに見せに来る猫。
と思い出は尽きぬらしい。
僕は猫を飼った事もなく、相手にもされぬたちである。
歳を取って二人きりになったら猫を飼うと決めているらしく、
それは同時に、僕一人だけ除け者になると言うことでもある。
まあ、よいのだが。
読了日:05月31日 著者:村松 友視
■どーなつ (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
爆心地の百貨店の屋上から物語は始まる。
人工知熊・海馬・田宮麻美・アメフラシ・異星人・つづら・あたま山と、
読み進むにつれ、僕の記憶は段々と曖昧なものになってくる。
改変された神経細胞を移植されたのは僕ではないのか。
誰が誰の記憶で、いま僕は「こっち側」にいるのか「向こう側」へ行ってしまったのか。
北野ワールドの真っ只中にいる僕を現実へ引き戻してくれたのが、
表2に描かれたアメフラシを抱く田宮麻美であった。
優しげに見えるその微笑みは、未来への希望なのか、何かに対する怒りなのか。
何ともしんみりとした読後感であった。
読了日:05月28日 著者:北野 勇作
■ザ・万歩計
万城目よ、今度はどーでもよい莫迦話をつらつらと、それも嘘八百に書いとるな。
まあ、面白いから良しとする。
などと思いながら読んでいたら、本当にトナカイはおしっこに集まるそうだ。
ということは、僕の積年の疑問も解決したことになる。
常々、あの鬼は何処から来たものかと疑問に思っていたが、なるほどそういうことであったか。
人にはその人にしか見えぬものがあり、 万城目には万城目にしか見えぬものがある。
僕には何ひとつ見えるものはないけれど・・・。
読了日:05月24日 著者:万城目 学
■ラピスラズリ
読み始めてすぐに、僕の意識は幻想の世界へと誘われる。
自然と瞼が重くなり、薄目で活字だけを無意識に追う。
ふと我に返り、現実の世界へと舞い戻るも、
ふたたび僕の意識は堕ちてゆき、ふわふわとした夢心地のまま読み終えた。
僕の頭の中は、十里夢中。
読了日:05月22日 著者:山尾 悠子
■邪馬台国はどこですか? (創元推理文庫)
歴史に疎い僕は、ああそうなんだと素直に納得し、楽しく読めた。
八幡平がかような地であったとは露知らず、学生のころ一度訪れている。
バイクでひた走り、いくつもの温泉を通り過ぎたが、あまりの寒さに湯につかれず、
"ゆきの小舎"という小さな民宿に泊まった。
宿には、ゆき夫妻が寄り添う後姿を撮った写真が置いてあった。
とても味わい深い写真で暫く眺めていたのを覚えている。
とても静かな所で心安らぐ地であった。
遠い昔、卑弥呼はここに居た。僕はそう信じてやまない。
いつの日かこの本を携え、女房と寄り添い、この地を訪れてみたくなる。
読了日:05月17日 著者:鯨 統一郎
■花の鎖
なんとなく会社帰りに図書館へ行き、アの棚から順番に見て回る。
ミの棚で思わずアッと声が出る。湊かなえの本が棚に納まっているのを久しく見た。
予約件数の多さにあきらめていたのに、どうぞといわんばかりに鎮座している。
早速カウンターへ行き、急ぎ家に帰り読み始める。
梨花・美雪・紗月、同じ街に住む3人の物語がパラレルに展開され、
後半になるにつれ盛り上がってくる。
先を急ぎたい気持ちを抑えながら、ゆっくりと読む。
高野? 僕の目が留まる。
いつもそうであるが、僕はかなり鈍い。
読了日:05月12日 著者:湊 かなえ
■太陽の塔 (新潮文庫)
僕の奥さんはファンタジー好き。
めちゃくちゃ面白いファンタジーだと言って渡したが、 ほんの数頁で諦めたようだ。
なぜこの面白さを判ってくれぬのか。
男汁溢れる大学生活を送った僕は、ずーっと若気ながら読んでいた。
アホなことを古めかしい文体で書く心地よさ。
どうでもいいことをぐだぐだと回りくどく言う馬鹿臭さ。
オモチロイではないか。
家で読んだからいいものを、 外で読んでいたら僕はただの変態だと思われていたことだろう。
この一冊で僕は、森見登美彦について行こうと決めた
読了日:05月09日 著者:森見 登美彦
■文福茶釜 (文春文庫)
娘がまだ物言わぬ幼子の時分。分福茶釜の茂林寺へ連れて行った。
狸の焼き物が並ぶ参道を歩いていた時である。胸の中で娘が僅かにピクリと動いた。
もしや、と思いタカイタカイをしながら狸の顔へ近づけた。
案の定、大泣きである。近くを歩くおばあちゃん達からは、可愛そうにの非難の声。
ヨコにいるカミさんの呆れ顔。 あれから月日が流れ、小6になった娘を連れて茂林寺へ。
参道の真ん中をぎこちなく歩く娘にどうしたと聞くと、なんか少し怖いと言う。
そのトラウマは僕のせいであるが、騙し騙されるは世の常。
強く生きよと切に願う
読了日:05月07日 著者:黒川 博行
▼2012年5月の読書メーターまとめ詳細
▼読書メーター